音楽について

 

  人々は、まだ音楽の哲学的な側面を探求し尽くしていないため、その性質と意味の真の理解ができていません。音楽は、人生の中で、最も偉大で深遠で、すばらしい科学です。人々が、音楽の力と法則を見い出し、探求し、各々の人生に応用することができて初めて、彼ら自身の進化と完成が始まります。音楽を通してこそ、自然の崇高な力と賢明な法則が、明らかになるのです。1つ1つの音階に、調和し作用する力がひとつとなり表現され、それが思考、感情、追求行動を通して、人々の行為に影響を与えるのです。

 もし、人々がある特定の音に秘められた力の性質を発見し、それが人々に及ぼす影響を理解さえしていたなら、彼らは意図的に彼らの曲を構成する方法を学んだでしょうし、彼らの生活の中で驚くべき結果を達成することができたでしょう。そして歌や音楽劇は特定の目的の為に構成され、それぞれの曲や音楽劇がもらたす効果はすぐわかるはずです。そのように、標的と目的が明らかであれば、それが大ヒットするかどうかは簡単にわかります。そして1つの曲がドで始まる場合、次の音がなぜ2つ目、3つ目、4つ目、5つ目、6つ目になるかが明らかになります。さらに希望の結果を得るために、次にどの音をもってくるべきかも分かります。現代の音楽家は、既に確立された形式と規則に基づいて自らの旋律と和音の構成をしているだけであり、これでは十分ではありません。音楽の分野における過去と現在の成果に加え、新しい内容、目的と感覚が注入されなければなりません。しかしこれは、音楽は単に娯楽として楽しむものではなく、自然と人生の偉大で創造的な力なのだと、人々が認識するときに初めて達成されうることです。ですから今必要とされているのは、音楽とその要素のための新しい理解と知識なのです。

他とは違う音を作りだすためには、音の正確な振動数を知るだけでは不十分です。たとえば、ドの音は自然の力と関係があり、人々がその音を聞いた時、その人はその作用と関連すること、レの音は人間の人格に関係し、その音を聞いた人は、その個人の意識が内なる深い所で呼び起こされること、またソの音は人生の偉大なものへの憧れや追求を極めた人々の中で沸きあがり、またラの音は人間の意識と心にの広い領域を与え、シの音は人間の感覚と関係がある…といったことを知ることが大変重要となります。

この深く広い音楽の科学と、自然が人間の生活にかかわる大きな意味を、人々が本当に理解した時、初めてそれを教育的、および医学的目的に応用することができます。残念ながら、現在この瞬間まで、ヨーロッパでこの音楽の大きな意味に気付いた国は皆無といってよく、教育に応用されてはいません。音楽が若者に与える影響に関して単純な考えしか持たない人々は、音楽による幻聴や虚構といった考えを恐れるあまり、あまりにも狭く、萎縮した見方や機械的な考え方に偏っています。しかし幻聴や虚構といったものは、愚かな人間の中にしか存在しません。賢明な人には幻聴など存在しないことを理解すべきです。幻聴が見せるのは現実の影です。私は影を知っています。真実の木からは果物を得ることができますが、影からは何も得られません。幻聴のある人間に待っているのは敗北ですが、現実に生きる人間は必ず勝利に導かれます。